ハザマの世界って?

「HAZAMA-1 鬣」 M10 53.0 x 33.3 cm/墨、水彩 和紙、パネル/2017年

タイトルにHAZAMAとついた子たちがいます。
黒木リンが長年描き続けている作品シリーズです。
そんな作品たちのことを少しお話したいと思います。

私はHAZAAMAシリーズで「空間」を描きたいと思っています。
その空間のことを、私は「ハザマの世界」と呼んでいます。
光、音、におい…日々様々な感覚が私を刺激する中で、時に疲れ立ち止まりたくなるのです。
いろいろなものと「ちょうどよい距離感で生きたい。」そんな願いからハザマの世界は生まれました。

私(または絵の鑑賞者であるあなた)と生きものとが繋がれる空間、それが「ハザマの世界」です。

普段そこに、いるはずのない生きものたち。
遠い国や、人間が住めない海の中などで生きている、「彼らがいる空間」と、「今自分がいる空間」のチャンネルが合い重なるその瞬間、目の前に見えている景色は『ハザマの世界』になるのです。

違和感と心地よさが一体となった、自分だけの現実。
そこは寒くも暑くもない無音無味無臭、けれど何かの気配が漂う場所。
受け取る感覚が制限されているからこそ、私はそこに心地よさを感じます。
ハザマの世界に心を置くこと、私にとって現実に生きながら、心地よさを感じることができる空間であり、安らげる時間でもあります。

けれど、絵の前に立ったあなたには、あなたの好きに感じて欲しい。
作品を前にしたその時間を楽しんでほしい。ただそれだけです。

黒木リン 20240711